アメリカの越境EC市場に進出するには?市場規模とポイントを解説

アメリカの越境EC市場に進出するためには?市場の規模やおさえておきたいポイント等を解説します!越境ECとは、海外に向けてインターネットを通じて商品を販売するEC(Electronic Commerceの略。電子証明書のこと)のことを指します。2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、世界規模でECを利用する人が増えています。越境ECはコロナ禍以前から注目されていましたが、コロナ禍で旅行が制限されていた時は、日本の商品を越境ECで購入する外国人が数多くいました。世界の中でも特にアメリカはEC市場の規模が大きく、様々なECが参入するため必然的に競争率が高くなり、効果的なマーケティングが必要となってきます。

 

この記事では、アメリカの越境ECについて、市場の規模やおさえておきたいポイント等、進出する前に知っておきたい情報を紹介します。

最初に知っておきたいこと

 EC化率について

アメリカの越境ECに進出するにあたり、アメリカのEC市場規模を知っておく必要があります。市場規模は、その市場で行われる商取引の総額のことを指します。EC市場に絞って考える場合、商取引の総額の中で、EC市場がどれくらいの規模を占めているのかを知る必要があります。そのために、EC化率という指標が重要になります。

 

EC化率は、ECによって行われる取引の金額が、店舗販売や電話、FAXや対面取引なども含めた全ての商取引の金額の中で、どれくらいの割合を知るための指標です。EC化率は、アメリカのように市場規模が大きい国において、マーケティング戦略を考えるために非常に重要です。

 

EC化率を知れば、アメリカの消費者がどれくらいネットショッピングに移行しているのか、売り上げに影響を受けている商品やサービスは何か等、戦略を練る上で参考になる情報を得ることが出来ます。

EC化率はどのように求める?

EC化率は、EC取引の総額を、全ての取引の総額で割ると求めることが出来ます。例えば、とある分野の産業において、全ての商取引の総額が130億円だったとします。この中で、ECを利用した取引が39億円だった場合、計算は以下のようになります。

 

EC化率=EC取引の総額(39億円)÷全ての取引の総額(130億円)=30%

 

つまり、EC化率は30%であることが分かります。

ちなみに日本は、世界レベルで見るとEC化率は比較的低いです。夜遅くまで営業している店や24時間営業の店など、日本独自のサービスを展開しているため、EC以外の商取引が他国よりも充実していることが考えられます。

アメリカのEC市場規模

アメリカのEC化率

2020年初頭から2022年末までの間、アメリカのEC市場における売上高は上昇傾向にあります。2022年のEC市場規模は、前年に比べて7.4%増加しました。総額は1兆328億ドルで、日本円にすると100兆円を超えるほど規模の大きい額です。オンラインショッピングを利用するアメリカの消費者が、増加傾向にあることが分かります。

 

2020年の第1四半期(4月~6月)はEC化率が11.9%でしたが、新型コロナウイルスが本格的に流行り始めてから約3か月後の2020年の第2四半期(7月~9月)は、16.4%に増えました。外出制限や、営業を自粛する又は閉店するお店等が増えたことで、オンラインショッピングに頼ることが日常となった人が増えたのです。

 

2021年に入って以降は、EC化率は安定して14.5%以上をキープしています。様々な種類がある商取引の中で、全体の約14%をECが占める状態が続いていることから、アメリカの消費者にとってECは切手も切り離せない存在と言えます。

商材をジャンル別に見た場合の EC化率

2022年のアメリカでのEC市場での売り上げを商材のジャンルごとに見ると、衣類と雑貨がトップになっています。次に多いのが家具や建材、電子機器で、その次に車や車用品が続きます。

 

衣類と雑貨は1808億ドルの売り上げで、前年に比べて4.4%の増加となり、EC化率は13.9%となっています。家具や建材、電子機器は1121億ドルで前年と比較して1.3%の増加となり、EC化率は13.3%です。車や車用品は3.2%の増加で、EC化率は4.3%でした。

 

アメリカでは、アパレルやアクセサリーにおけるEC市場は元々高い傾向にありました。家具や建材、電子機器に関しては、コロナ禍の影響で外出を控えて家で過ごす人が増えたことから、インテリアやPC、AV機器などの需要が高まったことが考えられます。この傾向はこれからも続くと考えられます。

進出する際におさえておきたいポイント

アメリカのユーザーの特徴をチェックする

アメリカの越境EC市場に進出するにあたって、商品を買ってくれるユーザーの特徴を熟知しておくことが大切です。ユーザーについて知っておくべき情報は、どのような世代が越境ECを利用しているかということです。

 

アメリカで越境ECを利用している世代のトップ3は、第1位がミレニアル世代で15%、第2位がX世代で9%、第3位がベビーブーマー世代で3%となっています。ミレニアル世代は1980年代序盤から1990代中盤までに生まれた世代で、20代後半から40代前半あたりまでが含まれます。パソコンやスマートフォンを仕事で使うことが当たり前となっている世代なので、越境ECが日常的な物になっていることが、ミレニアル世代の使用率が高い理由と言えるでしょう。

 

X世代は1965年から1980年に生まれた世代で、ベビーブーマー世代は1946年から1964年に生まれた世代です。年齢層が若い世代ほど、越境ECに馴染みがあることが分かります。しかしコロナ禍によって、今までECに馴染みが無かった世代でもECを利用する傾向にあります。そのため、X世代やベビーブーマー世代の越境EC使用率が、これから上昇していく可能性があります。

人気のEC事業をチェックする

アメリカのEC市場には様々な事業があります。2022年の事業者シェアランキングの第1位はサードパーティ事業者で23.3%、第2位はAmazonで15.6%、第3位はWalmartで6.5%となっています。サードパーティとは、Amazonなどのオンラインマーケットに出品して販売するEC事業を行う事業者のことを言います。

 

Amazonは、日本でも利用している方は多いと思います。シェアランキングは2位ですが、サードパーティ事業者のプラットフォームとしての役割も果たしているので、影響力は非常に大きいと言えます。

 

Walmartはアメリカのアーカンソー州に本部があるスーパーマーケットであり、アメリカ国内は勿論のこと、世界規模で見ても最大級の企業です。ここでは、アメリカの越境ECに進出するにあたって知っておきたい二大EC事業、AmazonとWalmartについて紹介します。

 

Amazon

現在Amazonは日本を含めて、世界16カ国で展開されています。世界最大級のオンラインショッピングを手掛ける企業であり、2023年の第3四半期(7月~9月)の売上高は1431億ドルで、日本円にすると約21兆5000億円であり、前年同期と比べると13%増加しました。「世界で最も影響力のある経済的・文化的勢力の一つ」とも言われており、EC事業に関して圧倒的な存在感を示しています。しかし小売業業界全体に目を向けると、Walmartがトップになっています。WalmartもEC事業に参入しているので、Amazonにとって脅威となる存在になるのは間違い無いでしょう。

 

Walmart
Walmartは世界最大のスーパーマーケットであり、世界27カ国に店舗を持ち、ECサイトは世界10カ国に展開されています。2022年の第4四半期の決算においては、総売り上げが1640億5000万ドルであり、純利益が前年と比較して76.2%も増加しました。世界最大のスーパーマーケットとして、驚異的な業績を残しています。コストカットを徹底している企業で知られ、オムニチャネル(顧客の利便性を高め、購買の多様性を創出するための工夫)を推進していることでも有名です。例えば、ECサイトで注文した商品を最寄りの店舗で受け取れる、といったサービスがあります。

人気のある決済方法をチェックする

コロナ禍では人との距離をなるべく空ける、ソーシャルディスタンスが重要とされてきました。そのため、非接触型の決済方法が浸透するようになり、EC業界もこの流れに対応すべく、様々な決済方法を導入することになりました。

 

元々アメリカのEC市場では、クレジットカードの決済がメインでした。アメリカの消費者のEC上での決済方法の割合は、2015年の時点でクレジットカードが43%を占めており、2017年には半分を超えて55%となっています。次に多いのがデビットカードで、その次にペイパルとなっています。現金払いを選ぶ消費者は殆どおらず、2015年の時点でわずか3%であり、2017年には0%となっています。
最近では「BNPL」と呼ばれる決済方法が主流になりつつあります。BNPLとは(Buy Now Pay Later)の略で、後払い決済が出来るシステムです。消費者が商品を買い、一度BNPL事業者が料金を立て替えます。商品が発送された後に、消費者が料金を一括又は分割で支払うという仕組みになっています。

 

後払い決済なので購入のハードルが下がり、消費者のEC利用が促進されるというメリットがあります。また、BNPLは審査がクレジットカードほど厳しくないということもあり、クレジットカードを持てない若年層が利用しやすいというメリットもあります。大手ECであるAmazonがBNPLを採用して以降は、若年層以外の世代にも着実に普及しつつあり、この傾向はこれからも続くと考えられます。

アメリカの越境ECにどのように進出するか

Googleショッピング広告を活用する

Googleは世界全体で利用されている検索ツールのためユーザーが多く、Googleに広告を出すことでユーザーの興味を引くことに繋がります。アメリカでのGoogleのシェア率は約90%であり、圧倒的な利用率を誇っています。そのため、アメリカのユーザーに向けてGoogleを用いて宣伝することは、大きな効果が見込めます。

 

Googleで宣伝するための方法として有効なのが「Googleショッピング広告」です。例えばユーザーが「カバン」と検索すれば、様々なカバンの画像や価格、性能などが表示されます。画像でユーザーの視覚に情報を与えることが出来るため、日本語を知らなくても商品をアピールすることが可能です。検索したキーワードに沿った広告が出てくるので、ユーザーも興味や関心を持ちやすいです。アメリカの越境EC進出において、Googleショッピング広告は必要不可欠と言えるでしょう。

D2Cを取り入れる

D2Cとは「Direct to Consumer」の略で、自社の製品をECサイトで直接消費者に販売する、というスタイルのビジネスです。日本でも取り入れる企業が増えており、例えば「ミキハウス」ではECプラットフォームのShopifyを利用して商品を販売しています。アメリカでもD2Cを積極的に取り入れる動きが見られます。

 

D2Cを活用するメリットは「消費者の傾向が分かる」という点にあります。メーカー側が、消費者が購入した商品を直接的に知ることが出来るため、どのような物が好きなのか、どれくらいの価格帯の商品を買う傾向にあるのか、といった情報を知ることが出来ます。

 

D2CはSNSなどを通じて、ユーザーに直接宣伝をすることも可能です。ユーザーの中でも特にミレニアル世代はSNSを積極的に利用し、なおかつECの利用率が高い傾向にあります。そのため、ミレニアル世代に焦点を当てた宣伝も頻繁に行われています。また、テレビでCMを流すよりも、コストを安く済ませられることもメリットです。

日本の伝統文化を伝える

日本の伝統文化に興味を持つアメリカ人は多いです。藍染や陶磁器などを売っているセレクトショップを、アメリカ人が経営していることもあります。

 

日本の伝統工芸品は、職人が長い年月をかけて得た技術を基に作られるので、その凄さに感銘を受けて、購入したいと考える人も多いようです。国内での売り上げが芳しくない場合でも、SNSを利用して海外にアピールすることで問い合わせが殺到した、というケースもあります。ただし、日本の伝統工芸品だからと言って必ずしもアメリカで売れる訳ではなく、むしろ一部の商品が対象となるでしょう。

 

対象となる商品が限られるという課題もありますが、日本の良さを積極的にアピールしたマーケティングは、上手くいけば高い効果を見込めると言えるでしょう。

まとめ

アメリカのEC市場の規模は非常に大きく、更に成長していくことが予想されます。これからアメリカの越境ECに進出しようと考えている方にとっては、市場の動向をチェックすることが必要不可欠となります。日本の商品は「安くて性能が良い」が特徴であり、日本のブランド力の高さを象徴しているとも言えます。アメリカに焦点を当てた越境ECは、アメリカ全体に日本のブランド力を広める有効な手段となります。ユーザーのニーズに応えた商品を適切な価格で販売し、なおかつGoogleショッピング広告やD2Cで効果的に宣伝する等の工夫をすることが、アメリカの越境EC進出で成功するカギとなるでしょう。